李嘉冬先生「中国の若者は日本をどのように見ているのか」

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李嘉冬先生「中国の若者は日本をどのように見ているのか」

李先生からは、「中国の若者は日本をどのように見ているのか」をテーマでご登壇いただきました。最初に、ここで述べる「中国の若者」とは、その人の持つ情報量や家庭環境等によって個人差があるため、中国人はこうであると一概には断言できないことを留意しつつ、主に6つの側面から中国の若者と頻繁に接する李先生の経験を踏まえ、お話いただきました。

1つ目に日本は依然として世界の経済大国である点を挙げました。中国経済のターニングポイントとなった2010年、中国は日本のGDPを追い越し、世界2位の経済大国となったことから自国に対する誇りをもつ中国人がいることは極めて明白であることを述べました。一方で、一人当たりのGDPから見ると必ずしも経済大国とは言えない実状を冷静に捉える人もいる側面について触れました。著しく経済発展を遂げ、中国のインバウンドにより、中国人のこれまでマイナスに抱いていた日本のイメージが一変するようになったと言います。

渡辺記者
やはり自分の目で見ることは重要ですね!

2つ目は、日本は文化と伝統を守り続ける国である点を列挙し、民間人の古い資料や老舗が現在もなお残存するだけでなく、後世に受け継がれていることに感銘を受ける人が多くいるようです。李先生の学生の一人は、各界で活躍する人々の父母や先祖がどのように生き抜いていたか、取材するドキュメンタリー番組を最も印象深い日本の番組として挙げていました。中国では先祖を知れる番組がないため、新鮮さや感慨深いものとして、日本の番組を魅力としていることが分かりました。

3つ目に、日本は世界的にソフトパワーが強い国であることを挙げ、特にACG(アニメ、漫画、ゲーム)やACGの世界観は多くの若者を惹きつけているようです。実際に李先生の教え子は、日本の魅力に対する作文を発表し、アニメをきっかけで勉強するようになり、日本語作文コンクールで、最優秀賞と日本大使賞を受賞し、更にはコンクールの日本記者クラブでは歴史上初の最年少のゲストとして日本記者の質問に答えたほか、ラジオ番組にも生出演したそうです。

4つ目に、日本は観光資源が極めて豊富な国であることであり、鉄道の魅力として青春18切符を羨ましがる中国の若者もいるようです。

5つ目に、日本は最も留学しやすい国の一つである点に触れ、日本留学を希望する中国人の若者は、過去30年間で増加傾向にあると説明しました。かつて、中国ではエリート層の特権であった海外留学でしたが、日本の共通テストに相当する「高考」と呼ばれる中国の全国統一大学入試の受験を回避するため、海外留学を希望する中国の若者は増えているようです。中国での熾烈な受験競争を望まずに日本や海外での受験を試みる若者たちが増え、中国の留学におけるあり方の変化にも言及されました。また、欧米留学から日本留学を第一希望にシフトする傾向もあり、その背景に教育の質の高さや学費が比較的安いこと、且つ安全な環境を確保できる点において日本が最も魅力的な留学先として捉えていると述べました。

渡辺記者
日本に親近感が湧く理由の一つですね!

6つ目に、日本はアジアのスポーツ大国であることです。例として、2022年カタールで開催されたサッカーワールドカップでは、日本がドイツに逆転勝利した際、若者の中国人から、日本を祝福する声が多く寄せられたそうです。まるで自国のように盛り上がり、中国のソーシャルネットワークのホットワードランキングでは日本の勝利を祝う言葉がトップ入りし、声援が止まなかった実態に触れました。

渡辺記者
嬉しい!日本人はどのくらいこのことを知っているのでしょう…

中国はアジア最終予選で敗退し、参加できなかったことから、「なぜ同じような体型や身体能力にも関わらず、日本人はこれほど強いのか」とSNS上で書き込む若者もいたようです。SNSを通して、中国の若者たちは日本を応援するだけでなく、自国を比較対象にしながら、日本サッカーの強さや実力を追求する若者について教えていただきました。

最後には、日本と中国は世界地図から消すことはできないものであり、隣国として共存していかなければならないことをよく理解してこそ、互いに尊重し合い、国家間同士ではなく、一人ひとりとして関係構築できることを願い、今後の日中関係の展望ついてお話いただきました。

記者の視点

李先生は、普段から中国の若者に日本語を教えている経験を踏まえて、中国の若者がどのように日本を捉えているのか、お話していただきました。主に中国における大学受験の事情やワールドカップにおける日本の活躍を祝福する中国の様子など、具体的に教えていただきました。特に中国の若者は国内の大学に進学する学生もいる中で、日本の留学や入学を第一希望とする若者が例年増えている点は印象的でした。日本に留学や入学をすることで、日本の学生にとって身近に中国を知る機会になり、日中が交流できる機会がより増加している点は興味深かったです。

「日本に行った経験のある中国人と行ったことのない中国人の間では、ギャップがあり、日本や日本人のイメージは、異なる」と李先生は仰っていました。それは日本においても同様で、中国に行ったことのない日本人と中国に行ったことのある日本人では、中国や中国人のイメージは異なると考えます。私自身、今年8月に日中韓の学生と共に北京で開催されたフォーラムに参加しましたが、開催国が北京だったこともあり、非常にホスピタリティに溢れた中国の学生が多く、親切に案内してくれました。これが中国人であると一般化することはできませんが、初めての北京で新たな一面を知り、中国や中国人に対してより良いイメージをもったことは依然として変わりません。コロナが落ち着いてきた現在、島国の日本にとどまるのではなく、一度知らない世界に足を踏み入れることは、様々な価値観や文化、人を知り、その国や現地の人の理解を深められる最大のチャンスです。その上で、今後も他国の良さだけでなく、日本の良さも発見していきたいです。

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