プロジェクトの概要
国際社会の焦点となっているアメリカと日本、中国を中心とした今日的な問題について、トランプ政権の動向を追いながら、多角的な状況分析を行う。
第4回研究会:「インドからみた米中関係」
北京大学大学院・光華管理学院の企業管理学国際経営及び戦略管理学科で日本人で初めて経営学博士号を取得した中川氏は、2023年からはインド経営大学院でリサーチフェローを務める。このアジアの両大国を知る戦略科学者の中川氏に、アメリカ、中国に次ぐ大国して台頭してきているインドをどうみるべきか、そして日印、中印、米印関係の現状と将来について存分に語っていただいた。

最初に2040年代ごろの国際情勢の展望として、米中印という「新G3」の時代になると定義した場合、日本はその状況に対してそれら三国以外の「非G3イニシアティブ戦略」をとるべきであり、現在はそのシナリオにも対応した準備が必要であると提案する。
インドの状況については、政治と社会は周知の「カースト制度」を前提に社会が成り立っているが、そこから派生する日本ではほとんど語られない様相を具体的に解説された。それらの状況は日本人からみれば混沌であり、インドに進出する企業は、そうした状況を受け入れつつ、それに打ち勝つ策をもっていることが必要であると説く。それには定型があるわけでなく成功することは容易ではないが、米・韓の企業も進出してきているという事実を受け止めるべきでもある。
そのようなインドと日本との交流だが、日本側からインドへの政治的な働きかけも、その逆も希薄である。一方で、インドの人たちが日本に多く来た場合、社会に馴染めるか、その逆に日本社会がインドの人たちをどれくらい受け入れることができるかは、文化的にかなりハードルが高いのではないかとの考えを示した。
インドと中国との関係については、両国の間に国境問題が存在するのは当然としても、やはり文化的なギャップがかなり大きい一方、経済的な結びつきを深めていることも事実である。またどちらも「大国」である意識が強い。そうした中で中印は一定の関係を結びつつ、その時々で近づいたり対立したりという波のあるものになると考えるべきであるとする。なお、中国という国の構造について、「中共ホールディングズ」が支配権を有し、その事業会社として「人民解放軍」と「中華人民共和国」があり、人民解放軍と中華人民共和国はつながっているわけではないという興味深い図式を示した。
米印関係は同様に大国同士の関係にあるが、その関係に影響を与える要素としてインドと激しい対立関係にあるパキスタンとアメリカとの関係について説明。また中国とパキスタンとの接近にも言及し、同国が米中印のパズルのもう一つの重要な要素であることを指摘した。
以上のように、研究会メンバーが曖昧なイメージでした見ていなかったインドと国際関係の中での位置づけについて、中川氏による非常に示唆に富むものであった。

