報告:「トランプ政権と日米中関係」第3回研究会

プロジェクトの概要

国際社会の焦点となっているアメリカと日本、中国を中心とした今日的な問題について、トランプ政権の動向を追いながら、多角的な状況分析を行う。

第3回研究会報告

 第3回の研究会のゲストスピーカーには、アメリカ政治・メディアについて丹念な現地での活動や調査を元に旺盛な執筆活動を行い、また近著『台湾のデモクラシー』ではサントリー学芸賞を受賞された慶應義塾大学教授の渡辺将人氏をお招きした。今回は受賞された台湾の話もさることながら、長年調査・研究を続けてこれられたアメリカ政治について、現在の変動はどこから来ているのか、語っていただいた。

 その前に研究会では、恒例の手順として最初に研究会メンバーである樋口氏からインテリジェンスの観点からフェンタニルと日本との関係について、次いで佐志田氏から世界経済見通しと米連邦準備制度理事会と人事や政策動向について簡単な発表がなされた後に、渡辺氏からの75分の講演、そしてQ&Aという形式をとった。

 ドナルド・トランプと共和党については、渡辺氏は間近に発表したペーパーを研究会メンバーに事前に配布していたこともあり、主として民主党のここ10年ほどの状況を中心に解説した。その話は多岐にわたったが、2024年に民主党候補者がジョー・バイデンからカマラ・ハリスに代わった際に、その過程で選挙というプロセスを経なかったことについて、そこから民主党のどのような姿が見えてくるかについて述べた。またバラク・オバマ、バイデン、ハリスについての人物像、またその関係について解説。一方議会民主党では、台湾を訪問して蔡英文に面会したこともある下院議長として君臨したナンシー・ペロシからみた民主党の姿と彼女が地盤とするカリフォルニア政治の分析。

 民主党のリベラル派の思想と行動は、アメリカ全体を見た場合には支持を失いつつあるが、その中心的存在となってきたのは超ベテランの上院議員のバーニー・サンダース(正確には無所属)であり、若手では下院議員のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス、通称AOCである。一部から熱烈な支持を集めるAOCをどのように評価するべきか。また当面の民主党の次期大統領候補と目されるミシガン州知事グレッチェン・ウィットマーやカリフォルニア州知事ギャビン・ニューサムへの評価、それ以外に民主党と共和党の支持層について、詳細な分析を提示した。  

 講演の後、Q&Aセッションでは、改めてトランプ政権をどのように考えたらいいかという根本的な問題に続いて、米中関係が緊張する中で台湾有事の際にトランプはどのような姿勢をとるのだろうかという質問がなされた。前者にも関連するが、後者についてはトランプ政権というよりは、アメリカ国内世論が海外の紛争に対して積極的に動くことを支持しない状況が生まれており、アメリカの対中世論の世代別変化や台湾有事をテーマにした台湾ドラマ『零日攻撃』をめぐるエピソードにも言及しつつ見解が示された。それ以外に活発な意見交換がなされ、非常に実りの多い研究会であった。

(石澤 靖治:国際コミュニケーション学科)

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