報告:「トランプ政権と日米中関係」第2回研究会

プロジェクトの概要

国際社会の焦点となっているアメリカと日本、中国を中心とした今日的な問題について、トランプ政権の動向を追いながら、多角的な状況分析を行う。

第2回研究会報告

第2回のスピーカーは、研究会メンバーの1人である近藤大介氏に登壇いただいた。本来であれば、研究会メンバーがゲストスピーカーになるというのは不自然なことである。しかしながら、「トランプ政権と日米中関係」という本研究会のテーマを中国側から見た場合に、40年近く中国をウォッチし続け、30冊を超える中国関連の著作があり、ネットの「北京のランダム・ウォーカー」で連日精力的に情報発信を行っている近藤氏をおいて、このテーマの適任者は他にないために、是非話していただこうということになった。

近藤氏は、「習近平の中国」について、第1部「格闘する習近平(外交)」、第2部「苦悩する習近平(経済)」、第3部「動揺する習近平(政治)」、第4部「圧迫する習近平(中台)」、第5部「開放する習近平(日中)」という枠組みで話を展開した。第1部の外交では、第1次トランプ政権の際には、習近平政権は当初はそれに正面から対峙する姿勢をみせたが、その後息切れして「詫び」を入れる形で決着したとする。一方、第2次トランプ政権下では米中ともに誤算の中でのチキンレースになっていると分析。第2部の経済では、実際に発表される数字以上に、中国の実態経済は低迷した状態になっていることについて、具体的な事例をいくつもまじえながら解説。ただしDeepSeekによる新たな経済の可能性には注目しておく必要あると言及した。

第3部の政治では、巷間ささやかれている習近平自身の健康問題も含めて、習近平自身のパワーが大きく減退していることを指摘し、その後継者が誰かということに注目すべきだとして具体的に有力候補者の名前を挙げた。第4部の中台関係では、台湾総統の頼清徳の独立志向を解説。注目される台湾有事については、その有無とその手法について、いくつかの場面を想定した。第5部の日中関係では、米中関係の緊張を反映して中国が日本に秋波を送っている一方で、日本軍731部隊について異常なほど残酷な脚色をした映画を制作していること、日本企業の脱中国が進んでいること、中国富裕層の日本への逃避(潤日)が強まり在日中国人が100万人を超えるようになることなど、日中間の新たな側面について解説した。

近藤氏の話では中国について硬軟両面からの見方がなされ、非常に説得力に富むものだった。そのためその後の40分間のQ&Aでは、より突っ込んだ議論が展開され、極めて貴重な2時間であった。

(石澤 靖治:国際コミュニケーション学科)

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